恥

全部吐露しよう。先に言って置くと、マザコンでは全くないんだよ、母ちゃんでしこった事なんてないし、当然手出しした事もない。

高校生の頃かな、一緒に歩いている時に突然母ちゃんが俺に腕組みして来た事があった。でもそれに股間は全く反応しなかったぞ、寧ろドン引きだった。高校生ぐらいだしね、恥ずかしさの方が強い。

この上で、思い切って言えば、俺はこれ以上の美を見た事がない。昔の写真なども沢山あるが、石田あゆみとかと変わらない、でもこれ俺の股間に全く来ないからな、寧ろ俺のブス好きってこのせいかも。

喋りさえしなければ本物の美。頭は只々真っ白。何も考えていないので、思った事をそのまま喋っているだけで、だから延々と。別にこれも自然と言えばそれ迄で、そこ迄否定していない、俺もどっちかと言えば良く喋る。

白、色が何もないって事に俺はだいぶ助けられた。何も言わない、あーしろこーしろ、糞親父はうるさかったが、母ちゃんは全くない、本当に何も言わない、勝手に喋っているだけで。あった事、思った事を只言っているだけ。

自分の言いたい事言っているだけで、俺に何をどうしろこうしろ、全く。中学受験でも大学受験でも、何一つ言われた事がない。受かった時に褒められた覚えもなければ、落ちた時に咎められた覚えも、全く、完全に。

中高6年間、只々、毎朝俺を起こしに来て、朝飯食わせて、弁当持たせて送り出す、以上、何もない。毎朝食でも何か色々べらべら喋っていたとは思うが、俺は眠くてぼっとしているんで何も聞いていない。

別に、褒められたいなんても全く思っていなかったから、兎に角、日常が只々有難かった。赤点の毎日だろうが何も言われない、本買いたいって言ったらいつも金くれた。母ちゃんも読むけどね、それ、漫画でも。

餓鬼の受験が成績がどんな結果だろうが、何も変わらない、家族の関係は何も揺るがない、そんな事は些事、母ちゃんは多分何も考えていないから、こんな殊勝な事、思ってもいないけど。

でも、俺にはそう受け取れた。大学をやめた時も何もない、相変わらずいつも通り、勝手に喋っているだけ、料理作ってくれるだけ、布団引いてくれるだけ。何もないんだよ、本当に。

沖縄で同居してた時も同じ。パチプロやっているって言ったって、は～、大変だね、んで、今日ね？って自分の話をしだすから。俺が何やっているかに全く興味を持っていない。

俺が23時過ぎに帰って来て、飯が用意されている。ごそごそやっていると、起こしちまったのかも知れないけど、起きて来て、話し相手見つけたと言わんばかりに、ビール飲んで延々と喋り出す。

どれだけ救われたか分からん。いいよ、馬鹿にしてくれて、でも全部本当の事なので。