昔話・発端・その2

俺は入学当初から大学のそばで、そう、それこそ、教室まで徒歩5分と言う立地の、そんなところで一人暮らしをしていた。

当然の如く、家は部室の様相。手積みの麻雀にテレビゲーム。コンポで流行りの音楽を流し、棚には漫画の山。冷蔵庫にはビール、流しの下には、日本酒、焼酎、ウィスキー、ブランデー、何でも御座れ。

俺が家にいる限り、誰かが訪れて来る。そして、家の固定電話から、ポケベルやPHSでさらに召集をかける。面子が揃ったならば、すわ、麻雀開始。

世間一般が認知しているであろう、昭和の馬鹿田大学生そのままの生活が、平成に入ってしばらくした今でも、このグランド坂下の一室では行われていた。

だが、さすがに大学3年にもなれば、そう遊んでもいられなくなって来る。ぼちぼち、羅針盤をしっかりと見つめ、ユートピアに向けて帆を広げ、錨を上げる時期。俺の家にも人はそう集まらなくなって来ていた。

「面子が集まんなけりゃあ、飲みにでも行くしかねぇわな。」

「お前はいつもそればっかりだな。まあ、やることもねぇし行くか。」とデブ。

「いいぜ。でも、俺は終電で帰るからな!」とクマ。

「よし決まり!じゃあ出陣!」

この日は集まりが悪く、デブとクマと俺の3人だけ。麻雀もできない。時間は17時過ぎ。家で飲むのも、いつもの面子、何の新鮮味もないし、折角ということで、馬場の飲み屋に繰り出すことと相成った。

・・・。ここが運命の分岐点だったんだろう。残念ながら、家のセガサターンとは違い、人生にはリセットボタンもなければ、セーブポイントまで戻ってやり直すこともできない。だが、それに気付くのは遥か先の話になる。

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