給料日前の妖怪・その3

旧コラム

そのやりとりを俺はちらっと振り返って見ていた。確か、ババアのサンドに残っていたのは6千円。ジジイが店員に話していた残金は「6、7千円」。もうこの辺で、火曜サスペンスの崖の前みたいな状況だ。

さらに記憶を手繰る。このババア、最初、俺の2つ隣の台で打っていた。ちまちま財布から一本一本出して。小銭を人様に頼んでコインに替えるぐらいだからね、札なんてそんなに財布に入ってねえわ、当たり前。

その後、このババアは移動。で、そんなババアが、万札をいきなりサンドにぶち込んで、残金がサンドに表示されている、こういう状況が想像つくだろうか。

こういう奴は、両替機に行って一度崩してから、一本一本打つもんだ、俺の経験上。サンドが万札を受け付けるのに、わざわざこうやって打っているジジイババアはたくさん見る。ってことは?ここまで書けば、もういいだろう。

この出来事は5日の話。沖縄の給料日は5日か10日が多い。10日の奴ならば、かつかつだろうな。この日は封筒から金を出して打っている奴も見た。実際、客は非常に少ない。

いつも通り来ている常連客でも、打たずにうろうろ、休憩所で漫画、こんなのがたくさん。貧すれば鈍する、と言うが、こういう状況では魔が差すことも有り得る訳でね。

このババア、しばらくうろうろしていたが、夜勤でもあるのか、はたまた諦めたのか、18時過ぎにようやく帰った。ロープを持って便所に行ってくれれば良かったのだが、残念。

(続)

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