昔話・発端・その1

むしゃくしゃしていた。閉塞感なのだろう。時は1997年、バブル経済が崩壊し、平成不況の真っ只中。

俺自身には大して関係もなかったし、そんな意識を強く持っていたわけでもない。が、どことなく世間の重苦しい空気を感じてはいた。地価下落、不良債権、金融危機、こんな見出しが躍る紙面の毎日だった。

何にせよ、部屋でくすぶっていたことには違いない。だらだらとテレビゲームをやりながら、俺が口を開く。

「アワは?」

「連絡取れねぇな。」とデブ。

「マルは?」

「あいつは今日バイトじゃなかったっけ。」とクマ。

「・・・、面子が集まんねぇならどうしようもねぇな。」

大学3年の4月。とは言え、単位的にはまだ1年と何ら変わらない。入学当初からアルバイトで始めた塾講師に夢中になっていたからだ。いや、正確には、この少し前まで、だが。

好きで選んだ筈の大学の、あまりに退屈な授業、くだらないサークル。が、そんなのは大した理由ではない。そもそも俺が大学に入った理由は、この塾で講師をするためであった。高校の頃自分が通っていて憧れていた塾。

大学生にもかかわらず高三を教えられる能力、しかも家庭教師のような一対一の、その場凌ぎで何とでもなってしまうようなアルバイトではなく、2~30人を前にして授業ができる、プロと呼ぶに値する仕事。それを片手間でこなしつつ、大学生として自分の勉学にも励む、そんな理想像を描いていた。

この日は塾のバイトはなし。家でごろごろ。そこにいつもの面子がやって来て、アンニュイな時間を重ねる。

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