最期・1

管巻き

父から電話があった。余り会話にはならなかった。互いに適当な事を言っただけ。1カ月前位か、母から認知症になって来ている、と聞かされていた。

先日母からの話で、診断の結果、末期癌が進行していて、脳にも腫瘍が出来て、そのせいで記憶が出来なくなって来ているのではないか、と医者に言われたと聞いていた。

突然記憶が出来なくなって来たらしい。認知症と言うのはそんなに一気に進行はせず、徐々に徐々になるらしいので、それとは違うのではないか、と言う事で別に診察した結果が以上。

現在入院中で、コロナの関係で面会も基本禁止らしい。だから今すぐ帰っても仕方ねえが、完全に匙を投げられたら家に帰される様なので、その時には。

父からの電話って、今迄にあっただろうか。母から掛かって来て、そのついでに話す、以外にした覚えがない。本人が自分の意思で掛けて来たのか、看護婦や医者がやってくれたのか、その真相は分からない。

最早昼には朝食が何だったかも分からないと言う有様。毎日読んでいた新聞も、覚えられないから読んでも仕方ねえ、と諦めたそうだ。テレビも同様。もう何もしない。ついに煩悩を捨て去り解脱した様だ。

ニライカナイへ。

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